リモート研修、YouTubeを教材に使っても大丈夫?〜「勉強会での上映」との大きな違い

Q.弊社ではYouTubeのライブ配信機能を用いて、社員数百人に研修を実施し、アーカイブも限定公開しています。次の研修会では、第三者がインターネットに公表している動画を画面共有し、講師がコメントすることを計画しています。この方法でも元の動画の著作権を侵害しないのでしょうか?許諾を取る必要がありますか?

原則として、著作権者の許諾が必要です。例外的に、著作権法上の「引用」に該当すれば許諾なく利用できる場合もあります。研修の目的を達成しつつリスクを避けるために、「引用」以外の方法(動画へのリンクを共有するなど)も検討しましょう。  また、著作権法上の引用が認められる場合でも、動画プラットフォームの利用規約にも注意が必要です。

インターネットで公表されている動画も「著作物」として著作権法で保護されます。

そして、インターネットを通じて動画を配信する行為は、ライブであれ、アーカイブであれ「公衆送信」に該当し、これは著作権者が独占する権利(公衆送信権)です。社員数百人への「限定公開」であっても、法律上は不特定多数に向けた配信とみなされる「公衆送信」に該当する可能性が高く、無断で行えば著作権侵害となります。

 

配信ではなく、特定の会場で「上映」する場合には、著作権法38条1項により、利用できる場合があります。

 

著作権者の許諾なく利用できる例外規定として「引用」(著作権法32条1項)があります。これが認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

①公表された著作物であること

②引用であること(明瞭に区別でき、引用部分が「従」であること)

③公正な慣行に合致すること(出所の明示など)

④引用の目的上「正当な範囲」で行われること

 

研修で他人の動画にコメントする形式を採用する場合、他人の動画部分が「従」といえるか、特に注意が必要です。例えば、引用部分が配信全体のごく一部にとどまり、それに対する解説や批評が中心となっているのであれば、引用部分は「従」と評価できます。他方、第三者の動画をそのまま流して一言二言コメントする程度では、第三者の動画が「主」となってしまい、「引用」とは認められない可能性が高いでしょう。

他人が作成した動画を使って動画やライブの配信を計画する場合には、あらかじめ、内容について、著作権に詳しい弁護士にチェックを依頼することが安全策です。また、研修の目的を達成しつつリスクを避けるために「引用」以外の方法(動画へのリンクを共有するなど)も検討してみてください。

 

また、仮に著作権法上の「引用」が認められる場合でも、元の動画が公開されているプラットフォームや配信行うプラットフォームの利用規約で、画面共有のような利用が個別に制限されているケースがあります。著作権法とは別に、この「規約」に違反した場合は動画削除やアカウント停止といった措置を受けるリスクがあるため、併せて確認することが重要です。

 

上の相談についてもアドバイスをさしあげています。研修や社内教育での動画利用に関して不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。

(料金の目安)

法律相談:30分6000円(税込)〜

企業の顧問契約:月額3万3000円(税込)〜