無料広告詐欺

Q.私は小さな会社を経営しています。ある日とある求人サイトを運営している会社から広告掲載の営業の電話が来ました。担当者から、「無料掲載期間だけでも載せてみないか?」「無料期間が終われば有料に契約が自動更新されるが、その頃にもう一度連絡するので、そのときに解約してもらえればよい」と言われました。無料ならいいかと思い、契約しました。

 その後、無料期間終了前にその会社から連絡がなく、私も広告掲載のことを忘れていました。すると、ある日突然その会社から広告費名目で数十万円の請求書が届きました。問い合わせたら「有料期間に移行したので掲載料が発生している」「支払いが無い場合、訴訟せざるをえない」と言われました。

 この請求に応じないといけないのでしょうか。

A.支払う必要はありません。ほとんどのケースで支払を拒否することができます。

 無料広告詐欺とは、無料期間中であると言って広告掲載を勧誘し、無料期間が終了してから高額な広告掲載料を請求する悪徳商法の一つです。

 契約内容のチェックにリソースを割くことが難しい中小企業や個人事業主を狙って行われる点が特徴です。被害に遭わない一番の対策は、「契約しない」ことですが、もし無料広告詐欺に遭ってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

 

 中小企業や個人事業主が被害者となる場合、消費者契約法の保護を受けることができません。しかし、民法に基づき請求を拒否することができます。

 

 広告会社に対する主な反論は以下のとおりです。

① 有料広告契約は未締結

 相談者が締結したのは無料広告契約のみで、相談者は有料広告契約を締結する申込みをしておらず、有料広告契約は締結していません。

② 有料広告契約の錯誤に基づく取消

 自動更新の前に広告会社から連絡があると相談者は説明を受けていた場合、裏を返せば、広告会社から連絡がない限り契約は自動更新されないと相談者は認識していたということです。すなわち、勘違いに基づいて自動更新(有料広告契約が締結)されたので、錯誤(民法95条1項)に基づき取り消すことができます。

③ 信義則違反

 自動更新に関する条項は、契約書内の気づきにくい場所に小さな文字で書かれていることが多く、分かりにくく確認しにくい形で記載されています。さらに悪質な場合、申込み段階に口頭で説明がされない場合もあります。

 このような広告会社の不誠実な手法は信義誠実の原則(民法1条2項)に反し、広告料金を請求することは権利の濫用(民法1条3項)になるので、認められません。

 

 次に、支払を拒否するためには、どのような具体的な行動をとればいいのでしょうか。

 一番にするべきなのは、広告会社に対し、支払いを拒否する根拠として上記①~③を記載した内容証明郵便を送り、請求に応じない意思を表明することです。相談者からこのような書面が届いた場合、広告会社は、この段階で請求を取り下げることが多いです。最近では、相談者の主張を認め、広告会社の請求を棄却する裁判例が増えており、自身の請求が認められないと考えているからだと思われます。

 

 ただ、広告会社が引き下がらず、裁判を起こしてくる場合もあります。そのときは早めに弁護士にご相談ください。

 

弊所では、このような消費者トラブルについても取り扱っております。

上記の内容証明郵便の作成も承っております。

お気軽にご相談ください。