Q.私の勤務先では、従業員・お客様・近隣の住民で構成する団体(親睦会)をつくっています。会員は名簿上1000人近くいますが、もう何年も活動実体がありません。この際、解散してしまおうと思っていますが、団体規約には、会長の定めがあり、また、規約を改正する場合は会員の3分の1以上が出席する総会で過半数をもって決議するとの定めがあります。決議のやり方についてのルールはありません。どのようにして解散すれば良いでしょうか?数万円ですが、団体名義のお金もあり、困っています。
A.まずは解散を決議する総会を開催すべきです。開催の方法は、できるだけ簡易に、会員の意思を集約できる方法で実施するのが良いです。総会が成立しなかった場合、「事実上解散の状態にある」と評価し、清算手続へ進むことも実務的には可能だと考えられます。
お尋ねの「会」は、勤務先から独立した「権利能力なき社団」と該当しえます。権利能力なき社団とは、法律上の根拠によらず結成された任意の団体のことをいいます。勤務先とは独立の存在とも言えますので、勤務先の都合で勝手に消滅させることはできません。
こうした団体の意思決定は規約に従うことになります。今回のケースのように、規約で「総会を開催し、会員の3分の1以上の出席・過半数決議」と定めている場合には、まずその手続きを実施することが原則です。
総会開催が難しい場合の現実的な対応
しかし、実際には名簿上1000人近く会員がいるものの、連絡先が分からなかったり、既に多くの方が退会・転居しているなどで、現実的に総会の開催や定足数の確保が極めて困難な場合も多いでしょう。
その場合でも、「形式だけでも」規約に沿った総会開催の努力は必要です。例えば――
• 会員に対して郵送やメール、LINE等で招集(案内通知)を行い、できるだけ出欠や賛否の意思表明を集める
• オンライン会議やWebフォーム(Googleフォーム等)による「意思表明の受付」も活用する(ただし、総会の招集について「場所」の定めがある場合は、リアル会議の開催を省略することはできません)
• 案内通知を複数回行い、返答がない場合には「意思表示なし」として扱う旨を明示する
こうした最大限の努力を尽くしたうえで、それでも定足数に満たず総会が成立しない場合には、団体の実体(=活動意思)が既に失われていると評価するのが妥当です。
実体喪失後の「清算」への進め方
総会が成立せず「実体が失われている」とみなす場合でも、残余財産(団体名義の口座の数万円など)については、**一定の整理手続き(清算)**が求められます。
まずは「清算人」(通常は会長・元役員等)を定め、次のような手順で進めましょう。
1. 会員や関係者への周知
• 団体の解散および財産清算について、可能な限りの方法で会員に通知する(HP、掲示板、メール等)。
2. 残余財産の扱い
• 規約で残余財産の帰属先が定められている場合はそれに従う。
• 特に定めがない場合は、「元の目的に照らして妥当な使途」(例えばチャリティーへの寄付、構成員に案分返還等)とする。
3. 清算報告の実施
• 清算内容を簡単にまとめ、関係者に報告する(この段階でクレームが出なければ、社会通念上の問題は生じにくい)。
ポイントと注意点
• 規約に明確な「解散方法」や「残余財産の帰属規定」がない場合でも、過去の運用・団体の目的・社会常識に沿った手続きを行えば、重大な法律トラブルには発展しにくいです。
• ただし、会費未返還等で強い異議が出た場合は、個別対応や専門家(弁護士)への相談もご検討ください。
当事務所では、このような組織運営のサポートに関しても、法律相談・顧問業務として対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。
**(料金の目安)**
- 法律相談:30分 6,000円(税込)〜
- 企業の顧問契約:月額 33,000円(税込)〜
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