代襲相続と特別受益の関係とは?

Q.相続の場面で意外と知られていないのが、代襲相続人と特別受益の関係です。

今回は、2つの設例と裁判例をもとに、特別受益になるかどうかについて解説します。

被相続人である祖父に、長男(相続人、被代襲者)と孫(代襲者)がいるケースで考えていきます。

説例1)祖父が孫に「進学祝い」として100万円贈与した場合

説例2)祖父が長男に「自宅購入資金」として1000万円を贈与した場合

 

いずれの設例においても、祖父が死亡する前に長男が死亡して孫に代襲相続が発生した場合を想定してきます。

 

これらの贈与は、孫の特別受益となってしまい、持ち戻しの対象となるのでしょうか?

 第1 基礎知識

まず、代襲相続と特別受益について簡単に説明します。

代襲相続とは:本来の相続人(親など)が先に亡くなった場合に、その子(孫など)が代わって相続することをいいます。

特別受益とは:生前に多額の援助などを受けた相続人がいた場合、それを相続分から差し引いて公平にする仕組みをいいます。

 

 第2 説例1についてみていきます。

これは代襲相続人が被相続人から直接贈与を受けていた場合です。

【結論】 原則として、孫の特別受益に当たりません(福岡高判 平成29年5月18日)。

【理由】なぜならば、本来、被代襲者(長男)が死亡していなければ、孫に対する贈与は特別受益にはあたらないわけです。偶然、代襲が生じたことにより、一転、特別受益となり他の相続人が利するとするならば、公平の趣旨に反するためであると考えます

※ただし、「実質的に亡き親への援助だった」などの特別な事情があれば別。

 

 第3 設例2についてみていきます。

これは、被代襲者(亡き親(長男))が特別受益を受けていた場合になります。

【結論】 特別受益になり、代襲相続人である孫がその分を持ち戻す必要あります(東京地判 平成24年11月26日)

【理由】

 なぜならば、本来、被代襲者(長男)が死亡していなければ、長男の特別受益にあたる点は争いがないと思います。代襲相続人は、亡き親(長男)の地位を引き継ぐものですから、特別受益を受けた地位も一緒に引き継ぐことになると考えられるためです。

 

 第4 まとめ

  以上の設例を整理すると、代襲という偶然の事情に左右されないよう公平の観点から結論が分かれているというのがポイントになると思います。

  なお、「私のケースはどうなる?」と気になる方は、お気軽に弊所にご相談を!