Q.近隣の事業者が集まった業界団体があり、各社持ち回りで事務局をしています。公印もあり、その時の事務局担当が管理してきました。ずっと管理をしていくのも大変ですので、処分したいと思っています。処分を提案したところ、会議を開催して会議費を徴収する際などに発行する領収書には公印による押印が必要ではないかといわれました。押印は必要なのでしょうか?
A.法律上、押印がなくても必要事項が記載されていれば、押印がなくても領収書は有効です。必要があれば私印を押すことで足ります。このため、使用実態のない公印は、処分しても差し支えありません。
一般的に領収書の作成にあたり押印を義務付ける法令は存在しません。
法務省が公表した「押印についてのQ&A」では、法律行為を行う契約書ですら、押印が不要であることが明示されています([法務省Q&A](https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf))。
契約書は、法的な意思表示(法律行為)を行うものですが、領収書は、「金銭を受け取った」という事実を証明する文書です。法的な効力の点では、契約書に比べて領収書の方が低いといえます。したがって、領収書については、契約書よりもさらに押印の必要性が低いと考えられます。実際、内閣府規制改革推進室の文書でも、領収書への押印は不要という記載があります([内閣府資料](https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20200605/200605digital02.pdf))。
このように、法律上は、押印がなくても有効な領収書と認められます。押印のない飲食店などのレシートが有効な領収書として取り扱われるのと同じです。
ただし、収入印紙を貼付する場合には、一般的に、印紙と文書にまたがって押す「消印」が印紙税法上求められます。もっとも、消印は公印である必要はありません。国税庁のタックスアンサー([印紙の消印について](https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/13.htm))でも、私印による消印を前提とした記載があり、実務上も一般的に受け入れられています。
「取引先から押印を求められたらどうするか」と不安に感じる方もいらっしゃいますが、その場合も、公印や代表者印ではなく、担当者の私印(認印)で対応可能です。
ご相談のように使用実態がなく、長期間使用されていない公印については、盗難などによる悪用のおそれもありますので、漫然と保管し続けるよりも、ルールに基づいて適切に整理する方が、団体運営上も望ましいといえるでしょう。
当事務所では、このような日常業務における小さな疑問や、文書の扱い、規程整備、組織運営のサポートに関しても、法律相談・顧問業務として対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。
**(料金の目安)**
- 法律相談:30分 6,000円(税込)〜
- 企業の顧問契約:月額 33,000円(税込)〜
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