Q.私は障害厚生年金を受給しています。配偶者と離婚することになり、「年金も半分に分けて」と言われています。これまでずっと年金で生活してきたので、これが減らされると困ります。分けなければいけないのでしょうか?
A.障害厚生年金については、3号分割という強制的な手続による年金分割は通常できません。合意ができなければ、裁判所により2分の1分割とされる可能性が高いです。しかし、年金分割をしない合意ができることもあります。公正証書や和解調書で「年金分割をしない合意」ができないか、弁護士に交渉をしてもらうのがおすすめです。
■ 障害年金が減るかもしれない、そんな不安をお持ちの方へ——。
障害のある方(特定被保険者)が扶養している配偶者と離婚をする場合、配偶者から「年金を半分に分けて」と言われ不安に感じることは少なくありません。
ですが、まず知っておいてほしいのは、「障害年金そのもの」は離婚時の分割対象にはならないということです。
■年金分割制度
たしかに、離婚時「年金分割」という制度があります。しかし、これは婚姻期間中の厚生年金記録(老後の年金額に関わる部分)を分ける制度で、あくまで記録を分ける制度であり、受け取っている年金を現金で分け合う制度ではありません。とはいえ、障害年金受給中の被保険者について年金分割がなされば、支給額が減額されることが想定されます。
年金分割には2008年4月以降の期間を対象とし、相手が手続をすれば強制的に分割されてしまう「3号分割」と、お互いの合意で行う「合意分割」があります。
■3号分割で強制的に年金が下がってしまうの?
3号分割については、障害認定日が2008年4月以降である場合は、分割が禁止されています。障害厚生年金は、本人の働けないことに対する生活保障の性質が非常に強い年金であるためです。なお、障害認定日が2008年3月以前の場合は、分割できますが、3号分割が行われても、通常、年金額は減りません。したがって、3号分割で年金額が減少する可能性は低いです。
■合意分割なら拒否すれば大丈夫?
年金額が減少する可能性があるのは「合意分割」です。「合意」という名前がついているので拒否できると思われがちです。しかし、制度上、お互いの合意が成立しなければ、原則として裁判所は2分の1の割合で分割を認める傾向にあります。
ただ、もちろん配偶者が「年金分割をしない」と合意してくれれば、年金分割をしなくてすみます。よく話し合うことが大切です。とはいえ、上手く説得できても、後になって「やっぱり年金分割をしたい」ということもあります。このため、年金分割をしない合意は、公正証書や調停・和解調書によって行うことが必要です。
現状では、裁判をすれば、かなりの確率で2分の1ずつとなってしまいますので、配偶者の説得は大変です。説得ができても公正証書などの正式の書類を作る必要もあります。信頼できる弁護士にご相談ください。
福岡リーガルクリニック法律事務所でも、このような離婚に関連するお悩みについても対応しています。無事、障害厚生年金の年金分割を回避できたケースもあります。良い方法をご一緒に考えていきましょう。
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