相続放棄ができない?落とし穴に注意

Q. 遺産の中から葬儀代を支払いました。遺産を使ってしまった場合に相続放棄はできますか?

A. 民法921条第1項の3号は、相続の放棄をした後であっても、相続財産の一部を、「隠匿し、私にこれを費消し」たときには、法定単純承認をしたものとみなされる旨規定しています。

 これはつまり、一度遺産に手をつけ相続人のように振舞ったからには、法的には相続人とみなされてしまい、相続放棄は認められないということになります。

 それでは、「隠匿し、私にこれを費消し」たときとは、どのような場合でしょうか。

 

1 形見分けとしての衣類の持ち出しは?

  新品同様の高級な衣類を大量にトラックで搬出するといった場合には「隠匿」にあたりますが(東京地判平12・3・21判タ1054・255)、思い出の品を少量持ち帰る程度あれば「隠匿」にはあらたないケースが多いようです(大阪高決昭54・3・22判事938・51)。

 

2 葬儀代の支払いに使った場合は?

  葬儀は、社会的儀式として必要性が高く、時期についても予想できず相当の出費を伴うものであることを踏まえると、法定単純承認にあたらないとするケースが多いようです。

 

3 仏壇・墓石の購入に使った場合は?

  これについても2と同様の理由で、不当に高額でない場合には、法定単純承認にあたらないとされた事例があります(大阪高決平成14・7・3家月55・1・82)ただしこのケースは、費用の一部のみ遺産から支払ったケースです。

 

 いずれにせよ、絶対に法定単純承認にならないという話でもなく、事案に応じた判断にである点は、忘れてはいけません。

 相続放棄をしようとする場合には、法定単純承認をしていないかどうか、一度、ご確認ください。

 一方、文書の内容によって法的効果が生じるわけではない、社内文書や領収書、請求書、納品書などでは、社印を用いても特に問題は生じません。

 なお、個人と同じように会社も実印登録をすることができます。法務局に登録するもので、代表者印と呼ばれることが多いようです。

 当事務所では、このような、仕事上のちょっとしたお悩み事相談についても、法律相談や顧問弁護士としてアドバイスをさしあげています。お気軽にお声がけください。

(料金の目安)

法律相談:30分6000円(税込)〜

企業の顧問契約:月額3万3000円(税込)〜