中絶手術の配偶者同意が不要とされるケース

Q.産婦人科の医師です。妊婦の中絶手術を予定しています。配偶者からDVを受けており、離婚調停中とのことですが、このような場合も、配偶者の同意が必要ですか

A.妊婦が配偶者からDV被害を受けているなど、婚姻関係が実質破綻しており、中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合は、妊婦本人の同意だけで足ります

 

母体保護法は、人工妊娠中絶手術に「配偶者の同意」を必要としていますが、例外として、「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。」(同法14条2項)と規定しており、妊婦が配偶者からDV被害を受けているなど、婚姻関係が実質破綻しており、人工妊娠中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合は、法の規定する本人の同意だけで足りる場合に該当します(子母発0310第1号)。

 

■東京地判平成27年3月6日

配偶者からのドメスティックバイオレンス(DV)が存在する事案において,母体保護法14条2項の「配偶者が…その意思を表示することができないとき」に該当し、配偶者の同意を得ないで行われた人工妊娠中絶は違法ではないと判断した事例。

 

妊婦本人の同意だけで中絶手術を行う場合は、妊婦がDV被害を受けているなど、配偶者の同意を得ることが困難な事情を診療録に記録しておいてください。